パンダといえば、白と黒の模様がトレードマークです。
しかし、世界には異なる色をもつパンダがいることを知っているでしょうか。
体毛が黒い代わりに茶色い、珍しいパンダについて紹介します。
茶色いパンダ、七仔(チーザイ)
名前 | 七仔(チーザイ) |
性別 | オス |
出生地 | 中国陝西省(野生) |
現住地 | 中国(秦嶺四宝科学公園) |
白黒模様の体が特徴的なパンダですが、稀に例外があります。
秦嶺四宝科学公園にいる七仔(チーザイ)は、茶色いパンダとして有名です。
パンダの白黒模様にはカモフラージュなどの役割がありますが、七仔は黒の代わりに茶色の毛が生えています。
七仔は2009年、生後2か月の時に発見されました。
2020年に初の自然交配に成功し、健康に育っています。
七仔には「宝の中の宝」「チョコレートパンダ」などの愛称があります。
茶色いパンダがいるんだね。
パンダの亜種、シンレイパンダ
茶色いパンダである七仔は、通常のパンダと何が違うのでしょうか。
ジャイアントパンダの分類は、クマ科ジャイアントパンダ属です。
学名はAiluropoda melanoleuca(アイルロポダ メラノレウカ)といいます。
現存種以外のジャイアントパンダ属は、すでに絶滅しています。
2005年、ジャイアントパンダは2種類の亜種に分類できるということがわかりました。
広く知られている四川亜種と、秦嶺山系(しんれいさんけい)に生息する秦嶺亜種です。
秦嶺亜種は、シンレイパンダと呼ばれています。
シンレイパンダは稀に、七仔のような茶色いパンダが生まれてきます。
シンレイパンダは個体数が少ないため、中でも茶色い個体は、非常に珍しいといえるでしょう。
ちなみに、シンレイパンダの学名はAiluropoda melanoleuca qinlingensisです。
七仔はシンレイパンダだよ。
四川亜種と秦嶺亜種
前述した通り、パンダは四川亜種と秦嶺亜種に分けられます。
普段見る機会が多いのは、個体数が多い四川亜種のパンダです。
四川亜種と秦嶺亜種では、いくつか異なった体の特徴があります。
四川亜種 | 秦嶺亜種 | |
---|---|---|
毛色 | 黒と白。 | 四川亜種と比べ薄い褐色。黒の代わりに茶色の個体がいる。 |
頭部 | 大きくて細長い。 | 丸くて顎が小さい。 |
容姿 | 熊っぽい。 | 猫っぽい。 |
秦嶺亜種は、体毛の色が四川亜種ほどはっきりした白黒ではなく、稀に七仔のような茶色の個体が生まれます。
秦嶺亜種の個体数は現在、約300頭。
その中で茶色のパンダが確認されたのは、これまでに7回しかありません。
現在飼育下にいるのは、七仔が唯一です。
もともと個体数が少ないパンダですが、なぜ異なる特徴をもつ亜種が生まれたのでしょうか。
野生のパンダが生息しているのは、中国の四川省、陝西省、甘粛省です。
具体的には、秦嶺、岷山、邛崍、凉山、大相嶺、小相嶺の6つの山系に生息しています。
地図で見ると、秦嶺山系のみがほかのエリアと分断されているとわかります。
約1万2千年前に秦嶺山系はほかのエリアから孤立し、相互で遺伝子の交配がおこなわれませんでした。
それが原因で長い年月の末、異なる特徴をもつようになったと考えられています。
生息地の分断は、絶滅危惧種であるパンダにとって重要な問題です。
シンレイパンダは生息地が分断されたことで、独自の特徴をもったのか~。
シンレイパンダの歴史
最初に茶色いパンダが発見されたのは1985年。
陝西省で衰弱している野生のパンダが保護されました。
茶色の毛をもつ珍しいパンダは丹丹(ダンダン)と名づけられ、西安動物園で飼育されることになりました。
名前 | 丹丹(ダンダン) |
性別 | メス |
出生地 | 中国陝西省(野生) |
死没 | 2000年9月7日 |
丹丹はほかのパンダとの間に3頭の子をつくりましたが、生まれた子はいずれも白黒で、茶色ではありません。
丹丹以降、何度か野生の茶色いパンダが発見されましたが、2009年に七仔が保護されるまで、飼育下では見られませんでした。
2005年には秦嶺山系に生息するパンダが、ほかと異なる特徴をもつ亜種だと判明。
丹丹を含む茶色いパンダは、秦嶺亜種だとわかりました。
シンレイパンダの中に、なぜ茶色い個体が生まれるのか、はっきりした理由は解明されていません。
まとめ
・茶色い「シンレイパンダ」がいる
・四川亜種と秦嶺亜種がいる
・生息地の分断で独自の特徴をもった
・なぜ茶色い個体が生まれるのかは不明
非常に珍しいパンダだよ。