パンダを絶滅の危機から救う取り組みである、「野生復帰プログラム」をご存知でしょうか。
本書は飼育下パンダの野生復帰について、どこよりも詳しく知れる1冊。
マニアックな情報が知りたいパンダファンでも、満足すること間違いなしです。
概要
タイトル | 飼育下パンダの野生復帰 |
価格 | 5280円(税込) |
発売日 | 2023年10月27日 |
著者 | 張和民ほか(著)/岩谷季久子(翻訳) |
出版社 | 科学出版社東京 |
中国で実施されている、パンダの野生復帰プログラムの詳細をまとめた1冊。
野生復帰プログラムとは、その名の通り、飼育下の個体を野生に放ち、絶滅から遠ざけるための取り組みです。
「パンダの父」の異名を持つ著者と、中国ジャイアントパンダ保護研究センターによる、長年の軌跡がうかがえます。
科学的なデータを用いた専門的な情報は、ほかの本では得られない貴重なものです。
パンダの野生復帰について学べるよ。
内容
第一章 野生順化訓練と野生復帰研究の背景
第二章 ジャイアントパンダの生物学的特徴
第三章 野生順化訓練の環境と技術
第四章 亜成体野生順化訓練と母獣同伴野生順化訓練
第五章 野生順化訓練における飼育管理
第六章 野生順化訓練下の幼獣の行動発達
第七章 マイクロハビタットの利用
第八章 野生順化訓練期間における疾病予防と観察
第九章 野生復帰に関する遺伝学的分析
第十章 野生順化訓練選抜評価体系
第十一章 野生復帰のための生息地選定
第十二章 野生復帰モニタリングと研究
野生順化訓練と野生復帰研究の詳細がわかるよ。
レビュー
ここでしか知れない話が詰まっているよ。
トミーです。
パンダに関する書籍は無数に存在し、このサイトでも数多く紹介してきました。
しかし、その多くが読みやすいライトな内容であり、本書のように「ここでしか知れないマニアックな話」を詰め込んだ、専門的な書籍は限られています。
特に日本語で読めるものはごくわずかなため、本書にあるような貴重な情報を母国語で読める体験はとても幸せなものでした。
ちなみに、科学出版社東京は中国の書籍を数多く翻訳出版しており、本書と同じ岩谷季久子さんが翻訳した『野生パンダ 科学的探究』も刊行されています。
無類のパンダ好きである私でも初めて知る話が多く、ページをめくるたびに新たな発見がありました。
たとえば、パンダの幼獣には生まれた時から体を掻く行動が見られますが、初期段階では後足を振るだけで体には届きません。
つまり、かゆいところを掻くことができず、実用的な意味はないのですが、それではなぜ生まれた時から「掻く」という行動が現れるのかは、まだわかっていないそうです。
こういうパンダ本が読みたかった!
このような学びが得られる書籍はそれほど多くなく、「こういうパンダ本が読みたかった!」と満足できました。
もちろん、メイントピックであるパンダの野生復帰プログラムに関しても、日本語で得られる情報の中で、最も詳しく知れる書籍だと思います。
難しい内容が多いので万人に勧められるわけではありませんが、並のパンダ本には飽きてしまったという方にとっては、待望の1冊といえるでしょう。
まとめ
・野生順化訓練と野生復帰研究がわかる
・ここでしか知れない専門的な内容
・著者は「パンダの父」の異名をもつ
・科学出版社東京の出版
野生復帰プログラムを知れる専門的な1冊!