動物園にいるパンダを見ていると、執拗につきまとうカラスを目撃することがあります。
彼らはなぜ、自分より体格が大きなパンダにわざわざ近づこうとするのでしょうか。
今回はその謎を明らかにしつつ、パンダとカラスに関連するエピソードを紹介します。
営巣のためパンダに近づくカラス
パンダの近くには時折、こっそりと忍び寄るカラスの姿が見られます。
カラスがパンダに接近するのは、体から毛をむしり取り、巣を作るのに利用するためです。
カラスがパンダの毛をむしり取る様子は、国内だけでも上野動物園、アドベンチャーワールド、王子動物園と、全国的に確認されています。
実はカラスの被害にあっている動物はパンダだけでなく、シカやロバが狙われるケースもあるようです。
このような行動は「窃盗」と「毛」を意味するギリシャ語を組み合わせて「クレプトトリシー」と呼ばれています。
クレプトトリシーはカラス以外の鳥にも見られ、シジュウカラやコガラなど、多くの鳥類はほかの動物の毛を材料に巣を築きます。
パンダの毛で巣を作るんだね。
生きた動物の毛を狙う理由
カラスをはじめとする鳥類が、ほかの動物の毛を営巣に利用しているとしても、どうして生きている動物からむしり取る必要があるのでしょうか。
以前は、鳥類の巣から発見される動物の毛は、動物の死骸から採取したものか、あるいは抜け落ちた毛を拾ったものであると考えられていました。
なぜなら鳥類にとって、生きている動物から毛をむしり取ることはリスクが高い行動だからです。
それでもそのリスクを冒す理由は、巣の保温性を高められるといったメリットがあるからでしょう。
また、生きている動物から採取した毛には、においが付着しており、ヘビなどの天敵を遠ざける効果があると考えられます。
パンダは温厚な性格をしており、カラスから毛をむしり取られても微動だにしない場合があります。
カラスもそのことをわかって、大胆な行動に出ているのかもしれません。
上野動物園のカタロウ
上野動物園には、ファンの間で「カタロウ」と呼ばれるカラスがいます。
カタロウは、パンダ舎に現れるカラスたちの総称です。
パンダとカタロウとが接する様子は、時に遊んでいるようにも見えます。
もちろん、クレプトトリシーに及ぶこともあるため、上野動物園の近くにはパンダの毛が使われているカラスの巣があるのでしょう。
たまにパンダがカラスを追いかけ回す様子も。
パンダガラスと呼ばれるコクマルガラス
余談ですが、カラスのなかにはパンダガラスと呼ばれる種がいます。
それは白黒模様の体をもつコクマルガラスのことで、日本を含むアジアに生息しています。
カラスと聞くと真っ黒な姿を想像しますが、カラスの仲間は約50種存在し、中にはコクマルガラスのように違った色合いの種もいるのです。
なお、パンダの名を冠したあだ名をもつ動物は、ほかにも多くいます。
パンダみたいに白黒模様!
まとめ
・カラスはパンダから毛をむしり取る
・クレプトトリシーは巣を作るために行われる
・上野にはカタロウと呼ばれるカラスがいる
・コクマルガラスはパンダガラスと呼ばれる
パンダとカラスは面白い関係にあるよ。
<参考資料>
・News Bureau「Paper: Some birds steal hair from living mammals」
・パンダ自身 7頭め 毎日パンダ自身
・講談社コクリコ